題「クレイジー・イン・アラバマ」
(原題"Crazy In Alabama")
1999年米 監督:アントニオ・バンデラス 主演:ルーカス・ブラック
媒体:TV放送(吹替え)
(あらすじ)
両親をなくし、兄のワイリーと祖母の許で暮らす少年ピーター・ジョセフ"ピージョー"。
ある日彼の叔母であるルシールがやってくる。ハリウッドで女優として成功することを夢見る彼女は、それに反対し、彼女を虐げていた夫を殺して、首だけ持ってきて祖母に子どもを預けに来たのだ。
そのため手一杯になった祖母は二人をルシールの兄ダブ叔父さんに引き取らせる。
葬儀屋を営むダブの住むアラバマの町では黒人差別が根強く残り、選挙権も無かった。
ある日ピージョーは選挙権を求め裁判所の前に居た黒人の少年とプールで出会う。
彼は直後に追い出され、抗議として座り込みを始めるが、保安官らに強引に解散させられる。
少年は逃げようとして保安官に捕まり、頭を打って死んでしまう。理不尽な街の差別に憤りを覚えるピージョー。
一方、一人旅を始めたルシールは、カジノで大儲けし、それを元手にハリウッドへ。プロダクションの門を叩くのだが・・・。
(感想)
フェロモン俳優バンデラスの初監督作品は、変てこだけれど愛すべき、隠れた名作であった。
時代は60年代、公民権運動が盛んになり始めた頃。
バンデラスの妻メラニー・グリフィス演じるエキセントリックな女性ルシールの珍道中と、少年ピージョーの目を通して描かれる黒人差別の物語が交互に描かれ、最後に一つになるといった感じで組み立てられている。
前者はコメディチックなタッチで掴みどころの無い、バンデラスが出演する(特にロドリゲス系の)作品に近い雰囲気があるが、なかなかどうして後者にはリアルな説得力があり、このアンバランスさもあって先の読めない展開で、観始めると目が離せない。
両者とも演技力のある役者が集って、リアリティを与えているのも大きいだろう。
特にピージョーを演じるルーカス・ブラックの真っ直ぐな演技は素晴らしく、見る者に深い感動を与える。
その構成もあって、黒人差別という割と今でも重いテーマを扱ってはいるのだが、どこか伸び伸びとした雰囲気があって、肩に力を入れすぎないで見れる。登場人物に善良な人が多いのも一役買っている。
主人公がモノローグで締めくくる映画は結構多いが、これほどまでに素直に心に沁みてくるのも珍しい。
男女や年齢を問わず見て欲しい作品です。