「マトリックス パス・オブ・ネオ」
(原題"MATRIX PATH OF NEO")
2005年 開発:Shiny Entertainment 発売:Atari
日本語版発売元:メディアカイト
PC DVD-ROM
ジャンル:3人称アクション
(作品解説)
1999年に登場し、斬新な映像と奥深いストーリーで世界を沸かせた「マトリックス」三部作。
その主人公であるネオ(キアヌ・リーブス)を操り、ザイオンを救え!
(レビュー)
・概要
「レボリューションズ」の興奮も過ぎ去った2005年の初めに製作発表され、
ナイオビとゴーストでしかプレイできなかった前作「エンター・ザ・マトリックス」に不満を募らせたファンを喜ばせた作品。
映画三部作(「マトリックス」~「リローデッド」~「レボリューションズ」)を網羅し、各作品のアクション・ハイライトシーンを自分で戦えると言うのはやはり興奮します。
・グラフィック/サウンド
悲しいかな発売元のAtariのゲームは全般にグラフィックに弱く、この「パス・オブ・ネオ」(以下「PON」)も例外ではない。
グラフィックは前作より改良されているもののややもっさく、PS2~Xboxレベルに留まっています。
しかしそれでもネオをはじめモーフィアス、トリニティー、スミスなど主要人物のモデルは中々よく出来ています。
(目と瞼の表現が下手糞で、サングラスの有無で大分印象が違いますが/苦笑)
サウンドはBGMが大人しめかな?幾つかのシーンで映画と違う曲だったのはやや不満。
銃器などの音に関しては悪くない出来です。スロー時の響き方も良し!
残念ながらゲームで新規に追加された台詞を喋っているのは映画オリジナルの役者ではないが、そこそこ似ている。
ただ、声での演じ方が抜群だったヒューゴ・ウィーヴィングが演じたスミス役の声優は違いが顕著。
(主役級で唯一、モーフィアスはローレンス・フィッシュバーンが声を当てているようだ。)
・ストーリー
あらすじは映画三部作と「アニマトリックス」のマトリックス・サーガを基本としているが、随所にオリジナル・エピソードが挟まれ、又映画に登場するシーンでも展開が違うところも多い。
特に最後の戦いはマトリックスサーガの持つ「ウォシャウスキーが好き放題描いた漫画映画」的な側面の局地と言うか、思わず笑ってしまった。
あくまでネオしか操れないので、「リローデッド」のフリーウェイ・チェイスなど、再現されていないシーンも多く、この辺はファンにとって残念な部分だろう。
「マトリックス」と「リローデッド」の間に挿入される、オリジナルエピソード。
マトリックスの世界が真実でない事に気づき始めている人々を救うミッションだ
・アクション
600種類のアクション!と銘打っているだけあって、簡単な操作で多彩な技を繰り出すことが出来ます。
最初は簡単なコンボしか出せませんが、トレーニングを積み、ストーリーが進むにつれ様々な技を習得。
特に救世主である事を自覚してからは宙を飛んだりジャイアントスイングをかましたり、壁を走りながら近づき飛び蹴りなんてことも出来ます。
複数の敵に同時に攻撃を繰り出す事もできる。距離や立ち位置で技が自動で変わるので、同じ操作でも単調になりにくい
ただし、ゲームが理不尽な強さの敵もいるのでストレスが溜まる場面もあり・・・(体力が回復したり、テレポートしたり。両方備えてる敵との戦闘では疲労困憊・・・)
第一作以降すっかり演出技法のひとつとして定着した感すらある「バレット・タイム」も当然再現。
余談ですがゲーム中では「フォーカス」という名称になっていますが、これは2000年に発売されたゲーム「MAX PAYNE」でバレットタイムの名称を使われてしまっているため。
(妙な話だが、おそらく「MAX PAYNE」製作サイドが"ゲーム素材としての"バレットタイムを商標登録したのではないか。)
銃弾を避け、高速(視覚的にはゆっくりと)のパンチを4発、5発、6発と相手に叩きこめ!
もちろん、ストーリーが進め銃弾を避ける事も、避ける事すらしなくてもいいようになるぞ。
止めた弾丸は弾き返す事もできるが、あまり有効な攻撃手段ではない(あまり当たらない)のが残念
・ロード/マップデザイン
家庭用ゲーム機を主軸に開発したと思われるが、ローディングは適度。
ムービーやステージの切り替わり時にロードするタイプの上時間も短いので、ストレスは感じない。
ロード画面。ロードの進み具合は確認できないが、大抵十数秒で終わる
マップは映画の舞台を忠実に再現したものや、オリジナルのものが混在しているが、オリジナルのマップも映画の雰囲気にマッチしていてグッド。
ただし、いくつかトチ狂った物もあるのは事実だが・・・
またHavok物理エンジンが搭載されているようだが、
正直言ってアクセントにもなっていない。使い方の是非以前に、存在感が殆ど無いのは痛い。
私は倒した敵に足がぶつかってようやく気づいた。無くても変わらなかったと思う。
ステージ内のオブジェクトなどは前作とは比べ物にならないほど造り込まれ、ここは素直に評価できる点だ。
"システムのバグ"によりモノクロに見える、刀のトレーニング。
ウラメェ~シャ~」と変な日本語を唱える"オガミさん"の霊から奥義を伝授される
・インターフェイス
Atariの販売するゲームの常だが、最悪と言っていいレベル。
前作を踏襲した格好だが、武器の選択もやりにくいし、キー操作が煩雑と言う印象。
おそらく家庭用のコントローラを前提に考えられているのだろう。
メニュー画面も必要以上に細分化されている気がする。
私はPCゲームはマウス+キーボードの主義なのでかたくなに拒否するが、
ゲームパッドなどを使用すればかなり快適になるだろう。
・ムービー
映画三部作及び「アニマトリックス」の映像が使用されている。
ここはオフィシャルゲームの強みだろう。
だが、全てのムービー合わせて1時間弱と言う話で、当然のことながら細切れにされている。
そのため映画を未見であれば全く話の筋がわからないし、
むしろ各作品を二度三度観ている程度でも厳しいと言う感じだ。
ムービー自体は小気味よくまとめられているのだが、それで終わってしまっているのは惜しい。
ゲーム本編がやたら長いとも思わないので、もう少し奮発してくれても良かった。
前作は2部・3部と並行して作られたのでゲームオリジナルのムービーが含まれていたが、
今作ではそういったものが無いのも物足りなさの一因か。
またゲームオリジナルの場面や一部映画にもあるシーンがレンダリングで再現されているが、
これには時々一部のモデルが消えてしまう、同じセリフを何度も繰り返すといったバグが見受けられた。
ムービーでも字幕が遅れて表示されるバグがあり、いよいよ困惑する事に・・・。
日本語版の翻訳は映画準拠なのか独自なのかよくわからないが、悪くない。
(総評)
第3部「マトリックス・レボリューションズ」公開から数年を経て、
オフィシャルにネオを操れるゲームが登場したのは感慨深い。
しかし「エンター・ザ・マトリックス」を経験した我々の懸念は殆ど当たってしまったのも事実で、
これはAtariと組んでしまった事を悔やむ他ないのだろう。
結果として、「映画をベースにしたゲームとしては良作、しかし2005~6年の単体のゲームと比べると見劣りする」
という、パっとしないモノになってしまった。
ウォシャウスキー兄弟の映画版以上の悪ノリや、適当でもそれなりにカッコ良く決まってくれるコンボなど、
素材は良いのに料理するデベロッパの力不足という感じだ。
とはいえ、映画のファンでなくても楽しめると言う程度には達していると思う。
大阪・日本橋での実勢価格は6000円と言ったところで、まぁこのぐらいが相場で良いのではないか。
マトリックスファンとしてみれば10点満点中で7点といったところ。
純粋にアクションゲームとしてみれば、10点満点中で5.5点ぐらいだろうか・・・。
もっと面白く化けた可能性がチラチラ見え隠れして、惜しい。